不安の原因を排除する
3月11日の大震災から、1か月が過ぎた今、被災者の恐怖と心の痛みは止まらない。そして、心配なのが、体の不調を訴える人が続々と増えていることだ。
Image: Jesslee Cuizon16年前に起きた、阪神大震災の教訓から、メンタルヘルス(精神的ケア)の重要性が叫ばれている。
この背景には、原発の恐怖や、津波に街が飲み込まれる映像などなどを見て、多くの子供や高齢者、精神疾患患者らが不安を訴えていることがある、と話すのは、慶応大学保健管理センターの大野裕教授だ。
また、首都圏の生活者からも、不安やうつの精神的変調をきたすケースがでてきているそう。こういった場合、原因となるような映像を見ることをやめ、地震前の生活に戻すことが大切とのことだ。
決め付けず押し付けず、見守る気持ちで
ところで、被災現場や避難所での生活を、精力的に支えている、復興を目指し、献身的なボランティアの人たちは、大変評価されるべきだが、やり方を間違えないよう、気を付けてほしいとのことだ。大野教授は、次のように説明する。
「『頑張りましょう』という励ましが、かえって負担になることがあります。過酷な状況の中で、自分なりに頑張っている人への、安易な励ましは酷というものです。『何かお役に立てることはありませんか?』という具体的な支援を問いかけるべきです。’心のケア’が話をして気持ちを解きほぐすことだと考えるのは誤解です」
また、外から来た人の’お気持ちはわかります’といった同情や、被災時の状況を聞くこともよくないそうだ。支援を押し付けるのではなく、被災者の希望を、彼ら自身が話せるよう導くことが大切とのこと。
以下に、米国立PTSDセンターなどがまとめた「サイコロジカル・ファーストエイド」による、支援の際の注意点をあげる。
・被災者の体験を、勝手に決め付けない
・すべての被災者が、心の傷を受けているわけではない
・被災者の、不眠や悪夢は当然の反応なので、ことさら「症状」と呼んで、病人呼ばわりしない
・すべての被災者が話したがっているわけではない
そして、大野教授は、こう述べる。
「日常的には寄り添い、見守るという姿勢が大事。ただし、体調の急激な悪化や、極端な無気力化と言った、大きな変化があるときは、送球に対応しなければなりません。」
(参考:週刊ポスト4月15日号)
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