自衛隊員死の実情
3月11日に発生した東日本大震災以降、日本の自衛隊の活動は、職務とはいうものの、過酷をきわめている。
Image: DVIDSHUBそんな中、1人の自衛隊員が急死した。陸上自衛隊旭川駐屯の第2師団第2特科連隊大体の管理小隊長のH陸軍曹だ。12日に旭川を出発した後、昼夜を問わないぶっ通しの被災地支援活動で、人命救助優先の緊急性の高い仕事が多く、夜の仮眠のみで、職務に徹した中でのできごとだった。
30日の休養日後、手足に不自由を感じ、救急で入院したとき、事態はすでに深刻で、その後まもなく息を引き取ったという。担当医師によると、あまりに劣悪な環境での労働による、脳梗塞だったようだ。
隊員たちのストレスの現状
現在、被災地で活動を行う自衛隊は、陸海空あわせると、延べ20万人に及ぶ日もあるという。彼らの士気は相変わらず高く、被災者から賞賛の声が上がることには変わりないが、このところ、彼らの活動を阻む別の事態が起こり始めているという。
現場の指揮官が、最近気が付いた複数の部下の言動から、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)の症状を起こしている隊員が増えていると判明したそうだ。
視線を仲間と合わすことをせず、目は虚(うつ)ろに空を見つめ、表情は暗く寡黙、ひっきりなく首をひねり無意味に歩きまわるというものだそう。そして、異様なのが、本人には、これらの記憶がまったくないということだ。
理由は、普段経験のないような膨大な量の遺体を見たり触ったりすることからのショックのようだ。遺体は、彼らの子供と同じくらいの年齢のものも多く、また、通常の溺死にくらべ、腐敗がすさまじい。それらが、一面に漂うため、腐敗臭も並ではない。ほとんど風呂に入れない彼らの、下着に染み付き、離れないのだという。
PTSDの症状は、直接遺体に関わらなくても、強いストレスを強いられる、放射線除染作戦部隊とその周辺でもでているようで、ミーティングの最中に、突然黙り込んでしまう隊員がいることも、司令部に伝わっているそうだ。
現在行われている対処法
陸上幕僚監部人事部は、事態を重視し、戦闘ストレス対処講習コース(CSC)を終了した幹部隊員や、衛生科のカウンセラーを派遣するなどの対処を始めているとのこと。今後も、現場の長期化が懸念される中、状況にあわせ隊員たちのケアを続けるつもりだ。
また、現在ストレスを抱えている隊員に対する、具体的な導き方としては、持っている悩みや恐怖感を吐きださせ、しゃべらせることだという。カウンセリングなしに、現場から外すことは、やってはいけないことだそう。
つらいことから逃げる癖をつけてしまうと、元の持ち場に復帰したとき、逃げることしか考えられなくなってしまうという。
’戦争’終了後の別な心配
震災の混乱収束後、今以上に深刻な問題がこることを、統合幕僚監部の幹部は危惧しているという。「バーンアウト(燃え尽き)症候群」と更なる「PTSD」だ。
以前、日航機墜落事故で、任務にあたった隊員の多くに、乗客の声が聞こえたり、眠れない、食べられない、などのPTSDが見られたからだ。今回の活動は、期間・規模・範囲など、すべてにおいて、自衛隊がかつて経験したことのない活動だ。
幸いにも、菅首相や北沢防衛大臣は、こういったことがらに関心を持っていると聞くため、政治的配慮に期待するとのこと。
(参考:週刊文春 4月14日号)
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