-(1) を最初から読む-もっとも必要な体の保護と心のケア
ところで、防毒マスクはあるにしろ、彼らが当時着用していた、オレンジの作業用ボイラースーツは、普段着に毛が生えたようなものだと、記者はいう。
Image: comedy_nose彼はさらに続ける。
「放射線がでていることは知っていたけれど、どの程度かはまったく知らず、今着てるものを着て行きました。長袖のオーバーオールの上に、白い作業スーツを着て、その上に、制服の上着を着ました。白い作業スーツ以外、他には何も特別なものはありませんでした。」
彼は、今回の作業で被曝したが、特に心配ないと説明する。
「26時間の作業後、休息所で検査を受けました。洋服と靴下に、微量の被曝があったので持っていかれました。体をこすって洗い、再度検査をしました。放射能は完全に取り除けなかったけれど、まあよしということで、帰されました。」
また、体調はいいといって、微笑みこういった。
「おかしいかもしれないけど、服はともかく、自分の体は大丈夫だと思ってます。」
休息もままならぬ過酷な現状とのたたかい
ところで、彼ら「福島50」が、仮眠施設として利用する、練習船「海王丸」には、生活に必要な施設がさまざまあり、図書館で漫画を読むこともできるのだが、彼らは、疲れと心配から、リラックスはできていないという。
海王丸の一等航海士も、彼らは大変おとなしく、食事の時も話しをしないという。記者が、勧めたビールも断られたそうだ。彼らが話すのは、あの暗やみと恐怖の出来事ばかりなのだと。
「とにかく、(火曜日に)電源が復旧してよかった。暗闇での作業は、本当に怖ろしいから。あれは、本当に怖かった。ケーブルは、高い場所にあったし、作業は思ったほどうまくいかなかったから心配です。」
こういった、岩手出身の、若い作業員は、それ以上話したがらなかったそう。
彼らは防毒マスクははめていても、あの着衣では、最低限の保護しかできない。全身鉛の裏付きの防御スーツは、上層部にしか行きわたっていないようだ、と記者は鋭く指摘する。
また、当日着用していた白い作業スーツは、デュポン社製の、不織布でできた’タイベックス’という使い捨て防護作業衣で、工業清掃者にも使用されるそう。肌への放射性物質の付着は防ぐが、ほとんどの放射線は遮断できない。放射性物質を増やさないよう、作業のたびにあたらしいもの着ると、作業員たちはいう。
彼らを守るのは、放射線レベルが危険値になるとアラームが鳴る、2つの、放射線感知用バッジだ。
「極危険な場所に、ずっとい続けるわけではないので耐えられます。長時間とどまらなければ、放射線の数値があがっても大丈夫だろうと聞かされています。」
と、別の作業員が、匿名を条件にと口を開いた。
原子炉冷却という、壮絶な仕事に加わった、岩手出身の若い作業員によれば、その後の電源復旧作業当初、他の作業員と、発電所の床で寝ていたそうだ。彼はこう説明する。
「私達は、シフト勤務ではなく、24時間体制です。被曝を最低限にするため、1時間働き、その後2時間休憩します。私は、シャワーを浴びにここ(海王丸)に来ましたが、明日は仕事にでます。作業員は最初10人でしたが、今は30人いるので、ここで食事ができます。」
Image: Bytemarks*作業員の方々の名前は、プライバシーを考慮し、記載しませんでした。《オススメの関連記事》東日本大地震/震災 厚生省発表の放射能濃度(食品・水道水・雨・海水)と、風呂ほか一覧「放射能の影響7世代」 国の楽観しすぎに警鐘 ロシア科学者放射性物質汚染(外部被ばく)、除去は「ぬるま湯」で 米保健社会福祉省(HHS)「安定ヨウ素剤は万能薬でなく副作用も」 3自治体で配布が、情報混乱 編集部 松田鞠
- (3)に続く-サンデーテレグラフ福島50(ウィキペディア)